株式会社 伊勢萬

意思決定をする時に「全員に意見をきいてみよう」という発言が自然と出る。経営層も正社員もパート社員も関係なく、一人一人の意見が尊重され、実際に実践する会社。この1年間で、自主自立経営、人が輝く経営に本格的に取り組み始め、大きな変化を体感している「株式会社伊勢萬」の変革ストーリーを【推進メンバー】として、この1年の変革の推進に尽力したメンバーへのインタビューから振り返る。

インタビューに答えてくれた方々

村田光晴さん・・・執行役員

船木健司さん・・・執行役員 杜氏

高松正朋さん・・・本社製造開発

北岡昂史さん・・・酒蔵製造

船木浩史さん・・・内宮前酒造場店長

典型的な指揮系統の組織運営、諦め

推進メンバーで1年前までを振り返ると、次のような状態だったと感じていた。

この「伊勢萬」も、元々は社内の意思決定は上層部の一部だけで行い、そのやり方を現場の社員に下ろしていくという、典型的な指揮系統で組織運営を行なってた。そのため、社員たちは、意味もわからずにただ仕事をしているシーンもあったという。決定に対しての不信感も正直、社員には多くあったと振り返る。一方で、経営層も、全てを背負わなければいけないというプレッシャーや緊張を常に感じでおり、体調を悪くしたこともあった。責任に対する認識の違いからミーティングの場は、どのように相手の意見を負かし、自分の意見を通すか、というようなディベートの場となっていたこともあったため、お互いが相手の話を深く聞くことが足りなかったと、今振り返ると理解できる。問題意識を感じ「自主自立経営」を行いたいと思いは元々10年以上前からあったので、様々な外部の仕組みなども取り入れていたが現状が変わらず、半ば諦めかけていた時期もあった。

変革のスタート

このような「伊勢萬」が、自主自立を実践し進歩を続ける組織となるためにどのようなことがこの1年で起こったのか?

1年前、社長が【価値観経営メソッド】と出会い、「これが伊勢萬に合うのでは?」と閃いたことから、「自主自立経営、人が輝く経営」に本気で取り組み始める。元々、理念を大切にした経営を行い、理念トーク集などを作って朝礼でディスカッションをするなどの地道な活動を続けていた。そういった土台となる考え方の素地があったことから、足りなかったことに気づくまでの時間が早かったと振り返る。今年1年を通しての変化を問うと、「みんなの意見を聞きながら進められるようになった事」が、一番大きな変化だと多くの社員、役員があげる。このみんなとは、役職や雇用体系問わず社員全員のことを指す。これにより、社員の参画意識が上がり、現場に即したことを実行できるようになってきたという。

慣れない環境、困難な変革

この取り組みも簡単ではなかった。これまでにもコンサルティングを依頼したり、他社の取組みを参考に取り入れたりしたが、変化があまり実感できなかったという経験があったため、社員も「また、変わらないだろう」という意識もあったという。また、いざ社員が意思決定の場に入っても、これまで参加した経験がなかったため、議論についていけないということもあった。お互いが意見を聞き入れることも難しいというシーンにも直面した。

それぞれの強い思いが次第に実を結ぶ

それでも、「自主自立できる組織、人が輝く組織」をつくりたいという強い思いのもと取り組みを継続した。最初は、議論についていくことができなかった社員も、日頃の考える回数が増え、次第に発言をすることができてきた。また、意見を聞き実践するということを一つずつ、丁寧に実践し続けることで、意見を伝えること・意見を聞き入れることが心地よいという雰囲気に変わっていった。これにより、経営層は自分と異なる意見を受け入れることができ、全てを自分が担わなければならないという思い込みを感じることが少なくなってきたという。また、社員も参画意識が高まったことにより、仕事に対するやりがいや充実感を味わうようになり、同僚などへの接し方も変わっていった過程を実感した。

スピード感のある変革

この変革を象徴する例が二つある。

一つ目は、防災訓練である。今までは、そういうことは会社からやってもらうものという認識であった。しかし、自分たちの身の回りのことを自分たちで考えていこうという動きが本質会議の中で生まれた。実際にこれは現場から上がってきた問題意識であり、それに対してみんなで考え、実際に行動することができたのだ。避難経路、避難訓練、非常口の増設など、費用もしっかり熟慮したうえで、現場主導の取り組みが行われた。

二つ目は、「せれくと」との契約更新を経営層だけで決めるのではなく、みんなで考えたという事。契約を継続するかどうか、自分たちの次の未来像はどのようなもので、それに対してサポートがどの程度必要なのか?しっかり打ち合わせをした(しかも打ち合わせ〜意思決定まで社長は一切参加せずに行われた)。通常、企業への顧問契約などの意思決定は経営層のビジョンから逆算する仕事であり、取り組みの1年目から社員がその意思決定に参加する事例は少ない。【価値観経営メソッド】を取り入れて1年でここまで意思決定を全体で行うこのとのできる組織に成長したスピードの速さは稀である。

このように、スピード感のある変革を起こすことができたのも、「自主自立経営」への強い思いと、少しずつを積み重ねていった「伊勢萬」社員全員の努力の結果であると言える。

驚くほどの変革を遂げた「株式会社 伊勢萬」。

だからこそ、今後の取り組みが問われる次の1年になりそうだ。今度どのようになっていくかが非常に楽しみであり、今後も弊社「せれくと」も2人3脚で全力サポートしていきたい。